■インカレ準優勝■
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記事内容
最高のペア
真夏の快進撃
照り付ける日差しの下、彼らのカヌーは滑るように進んでいった。
「今までで一番漕ぎやすい相手」。7月にペアを組んだばかりの二人が、驚くほどの息の合った走りを展開。関西ではカナディアンペアを制覇し、全国でも大健闘を見せた。
インカレ1000メートル決勝。二人は、第2コースからまずまずのスタートを切り、中位につけた。強い向かい風が遅く悪条件下で、「最初からピッチを上げていったら後半持たない」(浅野)と判断。前半は無理をせず一定のペースを保った。レース中盤、コースを右にはずれ荘になるが、そこはどんな悪状況でも静水のように進行させる艇操作、「浅野マジック」(吉澤)の見せどころ。難なく持ち直すと、後半狙いどおりの猛追。ゴール時にはトップにわずか1挺差まで詰め寄った。大学ではじめてカヌーに触れた二人が日本代表を含む強豪を押しのけ、堂々の準Vをもぎ取った。
固い結束
準Vへの道は決して平たんではなかった。関西インカレ2週間前に浅野が交通事故を起こし、右足を負傷。「痛くて漕げない」。前日になっても違和感は消えなかった。吉澤は、浅野との出場を半ばあきらめつつも、励ましの電話を入れた。浅野は欠場など考えなかった。そして自らに誓った。「つらくても必ず漕ぎきる」と。結果は関西3冠。「一緒に勝ちたい」という吉澤の思いは通じた。
インカレでも勢いは止まらなかった。大会前、院試で満足に練習できなかった浅野。しかしそんな不安も、逆境を乗り越えて得た固い結束が打ち消した。入部時から浅野のうまさにあこがれていた吉澤。「ひたすら漕ぐだけ」その艇操作に全幅の信頼を寄せ。パドルを握った。吉澤が全力で突き進む。そしてその後で浅野が舟を操る。シングルではお互い準決勝止まりだったが、ペアでは「1+1が2以上になる」(梅原監督)ことを体現してみせた。
試合後、二人はがっちりと握手を交わした。「全部浅野さんのおかげ」。浅野とだからこそなし得た快挙に、尊敬の念を深めた吉澤。吉澤との絶妙の連帯で、己の最後の夏を漕ぎ切った浅野。熱戦を終えた二人は感じていた。お互いを「最高のペア」だと――――――――。(佐藤愛美)
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